⑦自動機器による輸血検査
- 自動輸血検査装置の普及により,輸血検査領域における安全性の向上ならびに業務効率化に飛躍的に貢献してきた。自動機器には,反応原理によりカラム法と固相法があるが,正常な検体においては試験管法と同様の結果が得られるが,異常反応を示す検体では測定原理や測定法の特性により様々な反応性を示す。
- このセクションでは,異常反応を示す検体に遭遇した際,思わぬピットフォールにはまらぬよう,両検査法の特性について紹介する。
- カラム凝集法の推移を,ABO・Rh血液型,不規則抗体検査について図1,図2(日臨技コントロールサーベイより)に示した。
- 自動機器の発展に伴い,カラム凝集法導入している施設が増えてきている。ABO・Rh血液型検査では,全体では依然試験管法が多い結果であるが,300床以上の施設では90%以上で導入されている。不規則抗体スクリーニング検査では,カラム凝集法が多く占めている。カラム凝集法の利点として,①分注・判定作業の自動化 ②反応像が安定しており客観的 ③抗グロブリン試験の洗浄操作が不要であり,医療安全および精度管理面の向上があげられる。
- しかし,カラム法の原理や特徴を正しく理解していないと,思わぬピットホールに陥ることがみられる。本セクションでは,カラム凝集法の特徴とそのピットホールについて紹介する。
- 抗原あるいは抗体の強さによって,図5のように判定を機械が行う。人が判定を行うのに比べ,客観性に優れ,正確な分注量にておこなわれるため,精度についても優れている。しかし,決められた条件における判定であるため,血漿や赤血球の状態(フィブリンや溶血など)によってはイレギュラーな反応を起こすことがあるので注意する。
- 図6に,親和性の違う反応によって起こる凝集の強さの違いを示した。通常はⒶのように,対応する抗原(血球)でない場合は凝集せずにカラム(ゲル/ビーズ)を通り抜け,底部に沈殿する。しかし,抗原抗体によらない凝集,例えば,低温による自然凝集や高タンバクによる連銭形成や凝固などがある場合,Ⓑのように対応する抗原(血球)でなくても底部に沈殿されることなく,上部にトラップされて強い凝集に判定されてしまうことがある。一方,親和性の低い抗体の場合,Ⓒのように弱い凝集になる可能性がある。
- 測定感度は試験管法とほとんど変わらないが,ウラ試験では試験管法に比較して反応が弱い場合がある。
- 図7に一例を示したが,抗B抗体は1+~2+となるケースが多い。1+の場合は,ガイドラインに沿って,患者の年齢や疾患名,治療歴等調べる必要があるが,試験管法と比べて,相対的に低く判定される傾向がある。
- ABOウラ試験における,試験管法とカラム法の凝集の強さを比較したデータを表1に示した。カラム法で+w~2+と弱い反応を示した検体での試験管法の反応は,3+~4+に判定された。
- 図8は危機的出血を来したA型RhD陰性の患者に対し,O型RhD陰性血6単位の赤血球輸血をおこなった翌日の検査結果であり,機械は “MF” と判定され,肉眼でも部分凝集をはっきりととらえることができる。一方,図9はB型RhD陰性の患者に緊急でO型RhD陽性の赤血球製剤を輸血した例である。機械は抗Dとの反応で弱い凝集をとらえ “?” と判定しているが,肉眼でも部分凝集と判定できる抗Bとの判定が “4” であり,部分凝集をとらえることはできなかった。このように,混合した血球の比率によっては, “MF” をとらえられない事もあるので注意する。 ちなみに,マイクロプレート法には,部分凝集という概念は無いので,非凝集部は弱い凝集と判定される。
- マイクロプレート法の原理は,直接凝集法とLISS-IATを原理とした固相法がある。直接凝集法の原理を図10に固相法の原理を図11に示した。ABO血液型,RhD血液型検査については,直接凝集法がもちいられる。不規則抗体検査,DAT,交差適合試験では固相法がもちいられる。
- 特徴は,試験管法に比べて判定が容易であり,反応像が安定しており,客観性に優れている。血液型検査では,試験管法と同じ原理を用いているが,部分凝集という概念が無いためとらえることはできない。また,37℃反応性のIgG抗体の検出感度が高いとされており,低温性のIgM抗体との反応性は低いため,冷式抗体の影響は受けにくい。しかし,IgM性の抗A,抗B抗体とも反応しないため,交差適合試験でABO不適合があった場合,見逃される可能性があると言われている。
- 自動輸血検査装置の導入によって,検査過誤防止による安全性の向上や検査の標準化,業務の効率化が飛躍的に向上した。輸血検査の特徴として,検査結果が直接治療に繋がるため,異常反応に遭遇した場合であっても迅速な対処が求められる。
- 自動輸血検査装置に用いられている測定方法の原理や特性を正確に把握することで,異常反応に対し迅速且つ適切に対処することが可能となる。
- 輸血検査のスタンダードは試験管法であるため,異常反応に遭遇した際は試験管法による検査の実施が必要となる。 自動輸血検査装置の取り扱い方法とともに,試験管法による検査の技術を習得することが重要かつ不可欠となる。
Ⅵ.自動機器による輸血検査
各検査法の推移
カラム凝集法
カラム凝集法の原理
原理は,試験管法と同じく赤血球凝集反応にもとづいた原理であるが,凝集反応はそれぞれのメーカーが採用している,デキストランゲルあるいはガラスビーズ内に観察される。カラム反応槽で反応し凝集した赤血球は,遠心中に 「凝集塊」 としてカラム槽内にあるゲルあるいはビーズに捕らえられ,凝集していない赤血球はゲル(ビーズ)の間を通過して,カラムの底部に沈殿する(図3)。
カラム凝集法の内部構造
カラム凝集法の内部構造を図4に示した。
ゲルカラム法は様々な分子量による粒子サイズの重合デキストランゲルが充填されており,流動性が低いため,カラム内のゲルや赤血球が崩れにくい。一方,ガラスビーズ法は,比較的均一なサイズのガラスビーズが充填されており,流動性が高いため,カラム内の担体や赤血球が容易に崩れる。
ゲルカラム法は様々な分子量による粒子サイズの重合デキストランゲルが充填されており,流動性が低いため,カラム内のゲルや赤血球が崩れにくい。一方,ガラスビーズ法は,比較的均一なサイズのガラスビーズが充填されており,流動性が高いため,カラム内の担体や赤血球が容易に崩れる。
カラム凝集法(オモテ試験)の強さ
カラム内に充填されたビーズ/ゲルのフィルター効果により凝集赤血球と非凝集赤血球を分離する(図5)。
カラム凝集法(ウラ試験)の強さ
カラム凝集法における部分凝集
マイクロプレート法 (凝集法・固相法)
マイクロプレート法の原理
まとめ
日々、輸血業務に携わる先生方のために、日本臨床が検査を
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- 自動輸血検査装置の普及により,輸血検査領域における安全性の向上ならびに業務効率化に飛躍的に貢献してきた。自動機器には,反応原理によりカラム法と固相法があるが,正常な検体においては試験管法と同様の結果が得られるが,異常反応を示す検体では測定原理や測定法の特性により様々な反応性を示す。
- このセクションでは,異常反応を示す検体に遭遇した際,思わぬピットフォールにはまらぬよう,両検査法の特性について紹介する。
- カラム凝集法の推移を,ABO・Rh血液型,不規則抗体検査について図1,図2(日臨技コントロールサーベイより)に示した。
- 自動機器の発展に伴い,カラム凝集法導入している施設が増えてきている。ABO・Rh血液型検査では,全体では依然試験管法が多い結果であるが,300床以上の施設では90%以上で導入されている。不規則抗体スクリーニング検査では,カラム凝集法が多く占めている。カラム凝集法の利点として,①分注・判定作業の自動化 ②反応像が安定しており客観的 ③抗グロブリン試験の洗浄操作が不要であり,医療安全および精度管理面の向上があげられる。
- しかし,カラム法の原理や特徴を正しく理解していないと,思わぬピットホールに陥ることがみられる。本セクションでは,カラム凝集法の特徴とそのピットホールについて紹介する。
- 抗原あるいは抗体の強さによって,図5のように判定を機械が行う。人が判定を行うのに比べ,客観性に優れ,正確な分注量にておこなわれるため,精度についても優れている。しかし,決められた条件における判定であるため,血漿や赤血球の状態(フィブリンや溶血など)によってはイレギュラーな反応を起こすことがあるので注意する。
- 図6に,親和性の違う反応によって起こる凝集の強さの違いを示した。通常はⒶのように,対応する抗原(血球)でない場合は凝集せずにカラム(ゲル/ビーズ)を通り抜け,底部に沈殿する。しかし,抗原抗体によらない凝集,例えば,低温による自然凝集や高タンバクによる連銭形成や凝固などがある場合,Ⓑのように対応する抗原(血球)でなくても底部に沈殿されることなく,上部にトラップされて強い凝集に判定されてしまうことがある。一方,親和性の低い抗体の場合,Ⓒのように弱い凝集になる可能性がある。
- 測定感度は試験管法とほとんど変わらないが,ウラ試験では試験管法に比較して反応が弱い場合がある。
- 図7に一例を示したが,抗B抗体は1+~2+となるケースが多い。1+の場合は,ガイドラインに沿って,患者の年齢や疾患名,治療歴等調べる必要があるが,試験管法と比べて,相対的に低く判定される傾向がある。
- ABOウラ試験における,試験管法とカラム法の凝集の強さを比較したデータを表1に示した。カラム法で+w~2+と弱い反応を示した検体での試験管法の反応は,3+~4+に判定された。
- 図8は危機的出血を来したA型RhD陰性の患者に対し,O型RhD陰性血6単位の赤血球輸血をおこなった翌日の検査結果であり,機械は “MF” と判定され,肉眼でも部分凝集をはっきりととらえることができる。一方,図9はB型RhD陰性の患者に緊急でO型RhD陽性の赤血球製剤を輸血した例である。機械は抗Dとの反応で弱い凝集をとらえ “?” と判定しているが,肉眼でも部分凝集と判定できる抗Bとの判定が “4” であり,部分凝集をとらえることはできなかった。このように,混合した血球の比率によっては, “MF” をとらえられない事もあるので注意する。 ちなみに,マイクロプレート法には,部分凝集という概念は無いので,非凝集部は弱い凝集と判定される。
- マイクロプレート法の原理は,直接凝集法とLISS-IATを原理とした固相法がある。直接凝集法の原理を図10に固相法の原理を図11に示した。ABO血液型,RhD血液型検査については,直接凝集法がもちいられる。不規則抗体検査,DAT,交差適合試験では固相法がもちいられる。
- 特徴は,試験管法に比べて判定が容易であり,反応像が安定しており,客観性に優れている。血液型検査では,試験管法と同じ原理を用いているが,部分凝集という概念が無いためとらえることはできない。また,37℃反応性のIgG抗体の検出感度が高いとされており,低温性のIgM抗体との反応性は低いため,冷式抗体の影響は受けにくい。しかし,IgM性の抗A,抗B抗体とも反応しないため,交差適合試験でABO不適合があった場合,見逃される可能性があると言われている。
- 自動輸血検査装置の導入によって,検査過誤防止による安全性の向上や検査の標準化,業務の効率化が飛躍的に向上した。輸血検査の特徴として,検査結果が直接治療に繋がるため,異常反応に遭遇した場合であっても迅速な対処が求められる。
- 自動輸血検査装置に用いられている測定方法の原理や特性を正確に把握することで,異常反応に対し迅速且つ適切に対処することが可能となる。
- 輸血検査のスタンダードは試験管法であるため,異常反応に遭遇した際は試験管法による検査の実施が必要となる。 自動輸血検査装置の取り扱い方法とともに,試験管法による検査の技術を習得することが重要かつ不可欠となる。
Ⅵ.自動機器による輸血検査
各検査法の推移
カラム凝集法
カラム凝集法の原理
原理は,試験管法と同じく赤血球凝集反応にもとづいた原理であるが,凝集反応はそれぞれのメーカーが採用している,デキストランゲルあるいはガラスビーズ内に観察される。カラム反応槽で反応し凝集した赤血球は,遠心中に 「凝集塊」 としてカラム槽内にあるゲルあるいはビーズに捕らえられ,凝集していない赤血球はゲル(ビーズ)の間を通過して,カラムの底部に沈殿する(図3)。
カラム凝集法の内部構造
カラム凝集法の内部構造を図4に示した。
ゲルカラム法は様々な分子量による粒子サイズの重合デキストランゲルが充填されており,流動性が低いため,カラム内のゲルや赤血球が崩れにくい。一方,ガラスビーズ法は,比較的均一なサイズのガラスビーズが充填されており,流動性が高いため,カラム内の担体や赤血球が容易に崩れる。
ゲルカラム法は様々な分子量による粒子サイズの重合デキストランゲルが充填されており,流動性が低いため,カラム内のゲルや赤血球が崩れにくい。一方,ガラスビーズ法は,比較的均一なサイズのガラスビーズが充填されており,流動性が高いため,カラム内の担体や赤血球が容易に崩れる。
カラム凝集法(オモテ試験)の強さ
カラム内に充填されたビーズ/ゲルのフィルター効果により凝集赤血球と非凝集赤血球を分離する(図5)。
カラム凝集法(ウラ試験)の強さ
カラム凝集法における部分凝集
マイクロプレート法 (凝集法・固相法)
マイクロプレート法の原理
まとめ
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